「こいつじゃない」(怪談)
この話は、私が20代の時経験した話です。
当時 私は新宿の戸山と言うところに住んでいました。
その日も朝から晩まで働き、自分の部屋に帰ってきました。簡単に風呂に入り、すぐ寝床に。
夜中 2時ごろ急に雨が降り出し、雷までなり始めました。
明日も早いので、気にせず眠ろうとしました。
暫くすると 金縛り。動かせるのは眼だけ。
ふと天井に目をやると 、薄汚い麻製の服をまとった女性が十字架に張り付けられたような格好でいました。
長い髪がたれ、その隙間からじっと私を睨む。
左の耳元で「こいつじゃない。」と聞こえ、そちらに目を向ける。
首から上だけの男のひと。片目が無い。
今度は右の耳元で「だから言ったじゃないか。次だ。」と聞こえる。
また眼をやる。今度は20センチくらいの人。
あまりの事に、意識を失う。
次の日 国立感染症センター近くの土手から、大量の人骨が昨日の雨によって出てきた。
その骨は 戦時中の捕虜で、色々な人体実験にされた人たちのものだったそうだ。
彼らは封印が解け、自分達をモルモットにした人間を今でも探しているのだろうか。